●『期限をつけずにお金を貸したとき』
 身近なお話ですが、友人から頼まれてお金を貸したとする、「いつでもいいよ」と返済期限を決めないことがトラブルのもとになるのです。相手の経済状態は良くなったはずなのに、一向に返そうとしない。意を決して催促したところ、返済の期日がないのでもう 少し待って、と言って逃げようとする。折角の好意と友情が壊れてしまう…。
  返済期日の定めがない場合でも貸主は「相当の期間を定めて」催告をすることができます(民法 591条1項)。「10日後には返済して」とか「○月○日には」と期日を明示すればその期日が法律的効果を持つこととなるのです。金銭の貸し借りはトラブルの種となりますので、やるなら契約書や借用書をきちっと受け取り、返済期日をはっきりさせることは当然のことです。
  そのうえで、友人間での金銭の貸し借りはできるだけやめた方がいい、小額ならむしろくれてやる方が人間関係であとを引かない、と私は教えられたことがあります。長い友情が僅かなお金で潰えるなど両方にとって悲しいことですからね。




  
●「認知症と成年後見制度」、お年寄りを守りましょう
 老人介護や認知症など高齢化問題は、今や裁判所や弁護士など司法分野にとって最も重要なテーマとなってきました。
 去年11月に行われた九州弁護士会連合会の総会(熊本市)でも突っ込んだ研究発表が行われました。一般的に「認知症」といわれるものも、
(1)アルツハイマー病(特殊タンパク質が神経細胞に異常沈着する場合)
(2)血管性認知症(脳血栓や脳出血で血管が詰まって神経細胞が障害を受ける場合)
(3)レビー小体型認知症(手足のふるえ等パーキンソン症状)
(4)前頭側頭葉変性症(初老期に発生し、人格変性や言語障害を起こす)
などがあり、“早期発見と早期診断”こそが何より大切という専門医の講演もありました。
 なお高齢者が十分な認知力のないまま高額な契約書などに押印して民事問題となることが増えており、それを未然に防ぐためにいわゆる「成年後見制度」(2000年4月施行)が普及してきました。家庭裁判所の関与など多少の手続きは必要ですが、「転ばぬ先の杖」、どうぞ気になられる方はご相談をおすすめします。
 今年も良い年でありますように。





  
●「多重債務」から立ち直る
Q 複数のサラ金から借金をして返済を迫られ家族にも言えず苦しんでおります。過去を反省していますがどうぞご教示下さい。

A 勇気を出してよく相談されました。複数のサラ金から借金し厳しい催促を受けている場合を「多重債務」として、いつの時代も大きな社会問題となっています。
実はこれらサラ金はお互い連絡を取り合い、A社の借り分をB社が返す形をとってB社への借金が更に増える、全体の借金がみるみる増えていくケース(「借金地獄」)もあるのです。取り立てに来る人は銀行やローン会社などの債権者から低価格でその債権を買い取っている(譲り受けている)場合が多く、基本的に額面の交渉には応じるもので、真剣に交渉すれば 30%から 10%くらいまでに借金額を減額することも可能です。
あなたが全く無資産なら「自己破産」も最後の砦ですが、相手と交渉することで債務の減額や金利の減免、また3年くらいの分割で支払いを伸ばすなど「民事再生」、「任意整理」などの手続きも用意されています。
決してあきらめず、真摯に交渉すれば必ず道は開けます。まず周りと相談すること、そしてご家族のために今度こそ立ち直って下さい。






  
●「遅刻と解雇」について
Q 新入社員で再三の遅刻は会社の解雇理由となりますか。

A 就職難の今は就職できるだけでも幸せと感じなければなりません。一旦就職が決まると学生時代の怠け癖が出てきて会社の要求に応えられない。上司の再三の注意にもかかわらず遅刻癖が治らない・・・
普通、会社の就業規則には「勤務態度が誠実でなく、協調性に乏しく、正社員に足る適格性の無い場合・・・解雇できる」などと規定されて会社に幅広い裁量権が与えられています。この裁量権はしかし無制限のものでなく、結局は実態に即して解釈され、客観的、明確な基準があるわけでありません。現実に解雇が行なわれて「地位保全の仮処分」や本訴訟になったケースもたくさんあり、再三の注意でも遅刻が治らず職務怠慢とみられ、かつ反省の色が見られないとして懲戒解雇が認められたこともあります。
一般論として、社員の地位は法規で強く保証されているため、余ほどの勤務態度、就業規則違反がなければ解雇されることはありませんが、社員もこれに甘えることなく、会社の方針に沿って全力で頑張ることが必要です。会社の繁栄は社員の幸福にも直結するものです。




  



●「育児休業」について
Q 社員の「育児休業」のことを説明して下さい。育児に関する雇用関係を教えてください。

A 少子化の流れを食い止めるために企業も努力しなければなりません。子育てには妻(母親)ばかりでなく夫(父親)の役割も大変大きいものがあります。社員は会社に申し出て、子が1歳に達するまでは「育児休業」を取ることが出来ます。妻が同じく育児休業中でも、また妻が専業主婦でもそれは可能です(育児・介護休業法)。育児休業中、給与は出ませんが、雇用保険の「育児休業給付制度」により給与のほぼ半額相当が支給されます。
会社は3歳未満の子を養育する社員が申し出た場合、短時間労働を認め、また残業など無理強いしてはいけません。小学校入学未満の子を養育する社員には残業時間の制限があり深夜労働をさせてはなりません。会社はこれらのことを理由に当該社員を解雇したり、不利益を与えてはいけません。
これらの優遇措置を受けて、若い社員は育児にも心がけ、立派な子どもたちを育てて下さい。






  
    
●マイホーム購入で銀行ローンがだめになったとき
Q マイホームを目指して頑張っています。ようやく銀行の住宅ローンの目処もつき住宅販売会社と売買契約書にも調印しました。ところが突然、銀行の事情でローンが難しくなったのですが、それでも契約上の義務は続くのでしょうか

A マイホーム購入となると、一世一代の大仕事です。慎重に購入契約をした上で予期せぬ事態になったとき、「法律行為の要素に錯誤」があった場合として契約は無効と主張することができます。(民法95条)。「要素」とはそれがなければそもそも契約が成り立たないという大事な事項のことです。ただ本件、こちら側の事情で銀行ローンが受けられなくなった場合には、こちら側に「重大な過失」(同条但し書き)があったとして契約の無効を主張できない場合もあります。
民法95条「要素の錯誤」は、いざとなると解釈でもめることになります。契約調印にはくれぐれも慎重を要します。




       
●自動車事故で同乗の家族は損害賠償を請求できるか
Q 自動車事故を起こしました。助手席に乗っていた家族も損害を受けましたが、その損害賠償は保険会社に請求できるのでしょうか。

A 自動車損害賠償法では「運転者が他人の生命または身体を害した場合には損害賠償の責任がある」(第3条)、「被害者はその損害額を保険会社に請求できる」(16条)と規定しています。3条の「他人」には妻や夫、子どもなど家族も含まれるということが最高裁判例(昭和47年5月)で確立し、助手席に同乗した家族でも保険会社に損害賠償を請求できることとなりました。その場合、治療費や休業補償は全額請求できますが、慰謝料(精神的損害)については、事故発生の共同責任もあるということから、一般の場合の2分の1に減殺するとなっているようです。
まずは家族から絶対事故を起こさないということが大切です。




  
●「時効」について
Q 「時効が成立する」とよくいわれますが、どのような意味があるのですか。
くわしく教えてください

A 「時効」は内容多岐ですが、知っておくと意外に役立ちます。「時効」とは法の安定、法秩序の維持を目指すという思想の表れです。民事上の「時効」には2通りがあります。他人の物でも自分の物と信じて「平穏かつ公然」と占有した場合、善意で無過失なら10年、過失がある場合でも20年経てば、自分の所有物となります(「取得時効」) 民162条)。また逆に他人への支払い請求権について10年間その権利の行使を忘れていたら、最早その請求権は消失します(「消滅時効」 民167条)。見近な取引による債権については1年から3年で消滅することもありますので(「短期消滅時効」 民170〜174条)、注意しておくことが必要です。いずれも「時効の中断」をすることで、その不利益を防ぐことができます。尚、刑事事件には「公訴時効」があり、犯罪を起こしても逮捕されずに逃げ果たせた場合、最早公訴できない=無罪となります。殺人罪以外各犯罪、それぞれの公訴期間が決まっています。




「内縁関係」につい
Q 「内縁関係」について説明してください

A 法律的な夫婦は婚姻の届出をしているかどうか(民法 739条)で決められますが、婚姻していない男女がひとつ家で生活するケースは少なくありません。実際上夫婦の意思を持って共同生活を行い社会的にも夫婦と認められているような場合はいわゆる「内縁」、「事実婚」として現在では婚姻に準ずる法律効果を与えるようになってきました。
内縁関係でも、同居義務、扶助義務、家事債務の連帯責任、夫婦財産分与など民法上(親族編)の婚姻規定、親子、親権規定などは概ね準用されています。ただし「相続」に関わるものは婚姻届と直接関連するので否定的なものが多いと考えます。また労働基準法、労働災害保険法などの遺族補償、厚生年金法、健康保険法、公益住宅法など社会法規関連は法解釈や条文の明文化で内縁関係の保護が急速に広がってきたといえます。
なお「内縁関係」にまで到らないいわゆる「同棲」とははっきりと異なることに注意しましょう。




●「表見代理とは」
Q 妻が私に内緒で金融業者からお金を借りていました。しかも、私の名前を無断で連帯保証人の欄に書き押印していました。本人が押印・サインをしていないから無効だと思いますが(27歳男性)

A 妻は「日常家事」に関し夫を代理する権限(民761条)がありますが、その代理の範囲を無断で超えた行為でも夫婦だから支払いを請求できる、と業者は主張するでしょう。一定の代理権がある場合、その範囲を超えたときでも契約の相手方を保護する社会的必要性もあり、それを「表見代理」(109条)と規定しています。保護に値するのはその代理権がまだ存在すると信ずる「正当な理由」があるか(110条)、代理権を超えたことを過失なく知らない場合などです。本件、妻が金融業者と契約するなどは「日常家事」とは言えず、業者は夫を連帯保証人とするのなら夫の意思確認くらいしておくべきであって、それを怠れば表見代理は成立せず、支払う必要はないということになります。
夫婦の意思疎通こそ大事です。



  
●「遺産相続」について
Q 祖父が死亡し相続問題が出てきました。私の家族は大家族で近い親族、遠い親族と複雑ですが、円満に相続するにはどうすればいいでしょうか。(36歳男性)

A 相続が発生すると、せっかく円満だった家族関係にひびが入り、親兄弟が憎しみ合うケースも少なくありません。まず遺産分割の協議(民法907条)を丁寧に始めることが必要です。親族のどなたか、または第三者(弁護士など)が呼びかけて関係する親族に声をかけることになります。祖父が遺言書を残していた場合は当然それが優先します。その際妻(配偶者)と息子達(直系卑属)には最低取り分「遺留分」(1028条)が保証されています。遺言書が無い場合は「法定相続人」間で分けられます。妻と息子たちでは、2分の1ずつ。妻と兄弟だけのときは、妻4分の3、兄弟4分の1となります(900条)。
高齢者の方には遺言を書くことが薦められます。遺言書必ずは家庭裁判所で開封することが必要で、かつ家庭裁判所は遺言執行人を選任します。
財産を残したご先祖はご家族の結束と末永い幸せを祈っておられるはずです。お大事に…



  
●「自己破産」について
Q 大変恥ずかしい話ですが、多額の借金の取り立ても厳しく、収入の目処も立たないため、遂に「自己破産」の相談をいたします。これを機に何とか人生をやり直したいと思います。ご教示下さい。(55歳男性)
A 大変辛い決断をされました。借金額の方が返済能力よりはるかに大きいときに地方裁判所に「自己破産」の申し立てをします。その際30万〜50万円の「予納金」という裁判手数料が必要です。約1〜2ケ月で裁判官と経済状況などにつき詳しく話をする(審尋)こととなり、数日後に「破産手続き」が開始されます。約2週間の官報公告のあと正式に「破産者」となります。この辺から債権者の取立てなどは来なくなります。裁判所は全ての債権者に通告を行い、特段の反対意見(抗告)がなければ約1週間で「免責」が決定、すべての債務が原則として消滅します。
「破産者」の間、多少は社会的制限が生じます。財産処分を勝手に出来なくなる。居住や移動、長期旅行などが制限される。郵便物も破産管財人などを通じて配達されます。公法上の資格制限も出てきますが、選挙権や被選挙権には及びません。戸籍や住民票には一切記録されません。官報公告は出ますが、一般に知られることは稀です。ただ銀行融資などは事実上断られるのは已むを得ません。
決して人生をあきらめてはいけません。法律はいつでも皆様の味方です。
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