翻訳を終えて        原田知子
  
 私たちも結婚して10年がたちました。娘3人に恵まれ、お蔭様で大変幸せな毎日を過ごしております。
 夫は、家ではいつも明るく扱いやすい人ですが、慌てものでいささかピントが外れているため、子供たちの笑いの渦の真ン中にいます。2歳の真知子の話すことばがわからず意味をまわりに尋ねますと、「お父さん、これくらいのことがわからずにどうするの。」とおしゃまな次女友美子に叱られたりします。
 4年程前、突然アメリカからずしりとする書籍の包みが送られてきました。アメリカのお母様が夫の義昭について何か書き物をしておられることは前から聞いていたのですが、それを300ページのタイプ打ちに仕上げられたものでした。しばらくは放っておいたのですが、何かの拍子にめくった数ページが辞書なしでも楽しく読めたものですから、思い切ってはじめから読み進むこととしました。夫の少年時代のエピソードが次ぎから次ぎに出てきました。アメリカの御両親の注がれた愛情の大きさが改めて伝わって来ました。アメリカ人の物の見方、考え方のそれぞれが大変興味深いものでした。結局は、アメリカ人も日本人も、同じことに喜こび、同じことに悲しむというあたりまえのことがわかりました。そして、この1年間の留学生活のありのままを実に10何年もかけて少しずつ書き続けてこられたお母様の御苦労に驚ろきと感謝の気持を禁じ得ませんでした。
 そのうち、この貴重な記録を私と夫と2人だけのものに止めておくのは少し勿体ない、いずれは娘たちも父親の少年時代のことを読み、一層の親しさと愛情とを感じてくれるだろう、と考えるようになりました。夫の協力も得て学生時代に戻ったつもりで少しずつ辞書をひきはじめたのです。