「執行猶予」
Q.
違法な薬物を使用するなどした芸能人が「裁判で執行猶予になるかどうか」という話題をテレビやニュースで見聞きしますが,執行猶予になれば,刑務所に行かなくても良くなるのですか?
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A.
罪を犯し,刑事裁判で有罪判決を受け,懲役刑を科された人は,刑務所に入れられることになります。
懲役刑の執行猶予とは,この「刑務所行き」を一定期間先延ばしにしてもらえる制度です。また,それだけではなく,執行猶予期間を何の問題もなく経過した場合には,刑務所に行かずに済むことになります。
なぜこのような制度があるのか,不思議に思われるかもしれません。
刑罰は,単に犯罪者を懲らしめるためだけのものではなく,二度と罪を犯さないように更正させるためのものでもあります。
そこで,罪を犯した人であっても,一般社会の中で更正できそうな人であれば,しばらくは刑務所に入れずに様子を見てみようというのが執行猶予です。
ただし,執行猶予期間中に,別の犯罪で懲役刑を科される等問題があれば,執行猶予は取り消されてしまいます。懲役刑の執行猶予が取り消されると,現実に刑務所に行かなければならなくなります。
その場合,新たに有罪判決を受けた犯罪に対する懲役刑の年数に,執行が猶予されていた懲役刑の年数が加算されてしまいますので,相当長期の服役を覚悟する必要があります。
例えば,窃盗罪で懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けた人が,再び窃盗を行い,執行猶予期間中に懲役2年の有罪判決が確定した場合は,執行が猶予されていた1年分も加算されるので,合計3年間の懲役刑を受けることになります。
なお,余談ですが,執行猶予期間中の人を「弁当持ち」ということがあります。罪を犯せば取り消されてなくなってしまう執行猶予を,食べればなくなってしまう弁当に例えているそうです。
刑事裁判で,執行猶予付きの判決をもらうためには,刑法で定められた要件を充たす必要がありますが,最終的には裁判所の判断に任されています。
刑事弁護人は,罪を犯してしまい有罪判決を受けることが見込まれる人であっても,できるだけ社会の中で更正する機会が与えられるよう,様々な手段を用いて裁判所にアピールし,執行猶予付きの判決を求めます。
