「原田氏は卑怯」か

  「原田氏は政治家として卑怯だ」と「田崎史郎氏」は言った。福島原発の処理水の海洋放流問題がテーマになった昼のテレビ番組(10月3日 TBS 「ひるおび!」)で。私が大臣辞任の前日、最後の記者会見で発言したことについて、なぜ逃げるように発言したのか、なぜ在任中に発言しなかったのか、ということを指したもの。
政治家はその言動について如何に批判をされようとも覚悟の上ですが、「卑怯」という言葉は容赦できません、政治家が最も嫌う、最も人格を傷つける表現だからです。私は未だ「卑怯」と言われた記憶はありませんし、「卑しい」とか「ずるい」とかだけは言われないように心掛けてきました。私は決して自分を立派とも、まして完璧な人間だとも思っていません。多くの欠点のある普通の人間ですが、ただ少なくとも政治家として立派であろうと不断の努力はしているつもりです。
  そしてこの福島原発の処理水問題につき、1年近く思い巡らせてそれを発表したことに対し「卑怯だ」と言われる筋合いは全く見出せません。
私はそのことでTBS社に抗議しました。担当者レベルで謝罪も受けました。私は田崎氏にはその旨しっかり伝えて欲しいと依頼しました。

  昨年10月、大臣就任早々に福島の原発事故跡の現場を視察しました。広大な敷地に1000個にも及ぶ異様なタンク群と「今後の見通しは立っていない」という東電職員の説明に、これでいいのかと素朴な疑問と強い違和感を持ったのが最初でした。爾来、折を見つけて、政府の担当者、多分10人を超える専門家とも個別に意見を交換しました。意識的に新聞記事など周辺情報も集めました。とりわけ「原子力規制委員会」委員長 「更田(ふけた)豊志氏」が一貫して「処理さえすれば、放出しても良い」、「国際的安全基準は心配ない」の発言には大変心強く思いました。前任の委員長「田中俊一氏」も同じだったと聞きました。

  大方の人が、「放出やむを得ない、しかしそれを言えば大変な混乱を起こす」という印象でした。経産省の小委員会ではつい結論を出せないまま、延々と日が経ってきた。様々の方策、例えば貯留水を蒸発させる方式、地下に埋める方式、「凍土壁」を作って放射能デブリ(燃料廃棄物)と遮断する方式、遠く外洋に捨てる方式・・・いずれも現実的な解決とは思えなかった。処理水は今も毎日170トン増えている、この8月の貯留量(累積)は115万トンになる。2022年夏には137万トンとなり、既設の貯留スペースは満杯となり、どこか広大な場所を探さなければならない。いつ終わるのか、予測は立たない。その費用は一体誰が負担するのか、も大事な論点である。

  記者会見では、記者団に訊かれるままに、福島原発に触れた時「海洋への放出、稀釈しか残された選択はない」と発言しました。記者団は少し騒ぎになりました。私はその瞬間誰かが言わなければならないと素直に決断しました。本件、厳密には経産大臣の専管事項であって所管外の人間が発表する案件でなかったこと、しかし自分は広く原発問題を扱う「環境大臣」、「原子力防災担当大臣」であり、それ以上に『国務大臣』としての仕事があること、政治家として最後の勇気を振るわなければいけないと咄嗟に判断したものです。

  私はそのことも、またその後に起こったことにも、一切後悔はしていません。